太陽光発電システムは、自然エネルギーを利用して電力を生成する環境にやさしい装置で、経済的にもメリットがあります。しかし、設置にはさまざまな注意点があり、トラブルや事故を防ぐためには事前にしっかりと計画を立てることが重要です。この記事では、太陽光発電システム設置における注意点や失敗しない秘訣について紹介します。
自家消費率を高めるのが賢い！太陽光発電のサイズ選定の重要性
太陽光発電システムで生成した電力は売ることができるため、たくさん発電したいと考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、一般的に、太陽光発電システムはサイズが大きいほど初期費用や運用コストがかかります。たくさん発電できた場合は余剰分を売電できますが、売電価格が低いのが現状です。一方、システムのサイズが小さすぎる場合は不足分を買電することになりますが、買電価格は上昇しています。
よって、自家消費率を高めるのがコスト効率の良い選択です。自家消費率とは、太陽光発電で生成した電力のうち自分で消費する割合のことで、一般的には、自家消費率が60%以上であれば太陽光発電システムの導入が有利になります。自家消費率を高めるためには、家庭の電力需要と発電可能な電力を把握することが必要です。
使用する家電やライフスタイルによって異なりますが、以下のような家庭は電力需要が高くなる傾向があります。
・エアコンや冷蔵庫などの大型家電が多い
・洗濯機や食器洗い機など、時間帯指定機能付き家電を使用する頻度が高い
・昼間に在宅している
・夜間に活動的
自宅で発電可能な電力の量は、太陽光システムの方向や角度、設置場所などによって異なります。そのため、発電量の算出は業者に依頼するのが適切です。
これらの情報が把握できれば、太陽光発電システムの適切なサイズを割り出すことができます。システムのサイズは、家庭の電力需要とのバランスに応じて選定することが重要です。
▶ 太陽光発電の今年度の売電価格について
日照時間と影をチェック！最適な設置場所を見つけよう
太陽光発電システムの設置場所を検討する際は、日当たりと影の影響を考慮しなければなりません。日当たりが良い場所に設置すれば発電量は増え、逆に、影がかかる場所に設置すれば発電量は減ります。影の原因として多いのは、周囲の建物や樹木、電柱です。影は一日や一年を通して変化するため、設置前に十分な調査を行う必要があります。
一般的に、最適とされる太陽光発電システムの設置場所は屋根です。屋根に設置する場合は、屋根の形状や強度、耐震性などをしっかりと確認する必要があります。屋根に設置できない場合は、庭やベランダ、カーポートなどへの設置を検討するのもよいでしょう。ただし、敷地内のスペースや見た目、防犯性などを総合的に考慮することが重要です。
南向きじゃなくても大丈夫？地域や季節に合わせて方向と角度を決めるコツ
設置場所と同じく重要なのは、太陽光発電システムの方向と角度です。方向と角度は、地域や季節に応じて選択する必要があります。
太陽光発電システムの方向とは、太陽光発電パネルが向く方角のことです。日本では、南向きが最も発電量が多くなる傾向があります。南向きに設置できない場合でも、東西や南東、南西などに設置すれば発電量が大きく変わることはありません。ただし、北向きは発電量が大幅に減るため、避けたほうがよいでしょう。
太陽光発電システムの角度とは、太陽光発電パネルが水平面から傾く角度です。一般的に、太陽光パネルの最適な傾斜角度は30度といわれています。これは、日本全体の平均値であり、地域や季節によって太陽の高度が異なるため、最適な角度も異なります。
最適な角度に大きく関係する要素は、その地域の緯度や日射量です。緯度が高い北海道や東北地方では、太陽高度が低いため、パネルの傾斜を大きくして太陽光を早い時間から捉えるようにするのがよいでしょう。逆に、緯度が低い九州や沖縄では、太陽が比較的高く昇るため、傾斜角度を緩やかにすると太陽光を長時間受けることができます。ただし、太陽光発電パネルの角度を固定する場合は、季節ごとに発電量に差が出ることを覚悟しなければなりません。
この問題を解決するためには、可動式の太陽光発電パネルを使用するのも一つの方法です。可動式の太陽光発電パネルは、季節や時間帯に応じて自動的に角度を調整できるようになっています。これにより、常に最適な角度で太陽光を受けることが可能です。ただし、可動式の太陽光発電パネルは、固定式よりも高価で故障の可能性も高くなります。コストやリスクを考慮して選択する必要があるといえるでしょう。
事故や火災を防ぐ！安全で丈夫な取り付け方法とは？
太陽光発電システムを取り付ける際は、安全性の確保が重要です。設置中や設置後に事故や火災が起きないように、細心の注意を払いましょう。安全性を確保するためには、以下を考慮する必要があります。
・電気工事は、資格を持った専門業者に依頼すること
・配線や接続部分に、防水や防塵の対策を施すこと
・強風や落雷、地震などの自然災害に備え、太陽光発電パネルをしっかりと固定すること
・太陽光発電パネルが高温にならないように、十分な通気性を確保すること
また、長期間にわたって太陽光発電システムの性能を維持することも重要です。例えば、極端に安価なものは、劣化や故障が早く生じる可能性があります。耐久性を確保するためには、次の項目に注意するとよいでしょう。
・太陽光発電パネルは、品質の高いものを選ぶこと
・発電効率を低下を防ぐために、汚れや傷やひび割れなどがないか定期的にチェックすること
・適切な方法で太陽光発電パネルを清掃すること
失敗しない業者選び！信頼できる業者の見分け方
太陽光発電システムを設置する際は複数の業者を比較することが望ましいですが、その中から最適な業者を選ぶのは簡単ではありません。では、どのようなことに注目して業者を選べばよいのでしょうか。
設置を依頼する業者は、信頼と実績を基に選定する必要があります。よって、国土交通省や経済産業省などの公的機関から認定されている業者を選ぶのがおすすめです。認定されている業者は、一定の基準を満たしていることが保証されます。また、太陽光発電システムのメーカーや協会などから推奨されているかを確認しておくのもよいでしょう。推奨されている業者は、品質や技術力の高さが期待できます。
見積もりや契約内容などを明確に提示してくれるかどうかも重要です。見積もり書や契約書などに曖昧な表現がないかチェックしましょう。過去の施工事例や顧客の口コミなどを参考にすることで、実際に設置した結果や評判などが分かる場合もあります。
太陽光発電システムは長期的に運用するものであるため、設置後のサービスについても必ず確認しておきましょう。例えば、定期的な点検や清掃、故障時の対応や修理、買取サービスなどがあります。長期的な目線で自分のニーズに合ったサービスを選ぶようにするとよいでしょう。
コストパフォーマンスを重視！太陽光発電のコストを抑える方法
太陽光発電システムの設置には、初期費用と運用コストの総合的な考慮が必要です。初期費用とは、太陽光発電システムの購入や設置にかかる費用のことで、運用コストとは、太陽光発電システムのメンテナンスや点検にかかる費用を指します。
初期費用や運用コストは、太陽光発電システムのサイズや品質、業者によって異なりますが、価格が安すぎるものは避けたほうがよいでしょう。安い理由が品質の低さである場合、劣化や故障が頻繁に生じ、結果的にコストが高くつく可能性があります。
初期費用や運用コストを抑えるために工夫できる点は、次のとおりです。
・可動式よりも固定式を選ぶ
・複数の見積もりを比較する
・定期的に点検や清掃を行う
一般的に、太陽光発電システムのサイズが大きければ大きいほど、初期費用や運用コストは上がります。太陽光発電システムは、自家消費率を高めることを目的として総合的に決定することが重要です。
初期費用を大幅に削減！申請したい補助金や助成金の種類
太陽光発電システムの補助金や助成金とは、太陽光発電システムの導入にかかる費用の一部を国や地方自治体などが支援する制度です。補助金や助成金を利用することで、初期費用を大幅に削減できるでしょう。しかし、補助金や助成金には、申請条件や期限、上限額などが設けられています。そのため、利用可能な支援を事前に調べて、適切に申請することが必要です。
補助金や助成金の種類は、次のように分類できます。
国からの補助金
国が実施する補助金制度です。2023年10月現在、太陽光発電システムの導入のみで利用できる制度はありませんが、新築住宅の建築や購入と同時に太陽光発電システムを導入する際は、戸建ZEH補助事業などが利用できる場合があります。このような補助金は、一定の基準を満たせば申請が可能です。ただし、予算が限られているため、抽選や先着順となることを考慮する必要があるでしょう。
地方自治体からの補助金
都道府県や市町村などが実施する補助金制度です。日本が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した経緯から、申請を受け付ける地方自治体が増えています。条件や額は自治体によって異なりますが、居住地や設置場所などが条件に該当すれば申請できます。
その他の補助金
企業や団体などが実施する補助金制度です。例えば、電力会社の再生可能エネルギー導入支援事業や日本太陽光発電協会の支援事業などがあります。これらの補助金は、契約や加入などによって申請することが可能です。対象や内容は企業や団体によって異なります。
これらの補助金や助成金は、重複して申請できる場合があります。ただし、重複して申請する場合は各制度の規定に従う必要があるため、詳細を事前に確認しておくとよいでしょう。
発電効率の維持には欠かせない！適切なメンテナンスと点検
太陽光発電システムの長期的な発電効率を維持するために、メンテナンスと点検は欠かせません。太陽光発電システムにおけるメンテナンスとは清掃などの日常的な管理のことで、点検はシステムの性能や状態を専門業者にチェックしてもらうことを指します。メンテナンスや点検を怠ると、発電効率の低下を招いたり、故障や発火などのトラブルにつながったりする恐れがあります。
日々のメンテナンスでは、次の項目に注意しましょう。
・システムに傷やひび割れ、汚れなどがないか定期的に目視で確認する
・太陽光発電パネルを適切な方法で清掃する
・太陽光発電パネルが高温になりすぎないように、十分な通気性を確保する
・配線や接続部分には、防水や防塵の対策を施す
また、太陽光発電システムに、異常な音や臭い、発熱などがあった場合は、速やかに緊急点検を受けるようにしましょう。これにより、事故や火災を防ぐことができます。そして、目立った異常がなくても、設置後一年以内には必ず初回点検を受けましょう。その後も、年に一回程度の定期点検の実施が推奨されます。定期的に点検を受けることで性能低下や故障などを早期に発見でき、トラブル防止につながるでしょう。
メンテナンスや点検は、設置業者やメーカーなどに依頼できます。ただし、費用や内容は契約によって異なるため、契約時に詳細を確認しておくと安心です。適切なメンテナンスや点検を実施することで、長期的に発電効率を維持していきましょう。
停電や災害に備える！太陽光発電に追加できる蓄電池やオプション
太陽光発電システムには、蓄電池や他のオプションなどを追加することができます。蓄電池とは、太陽光発電で生成した余剰な電力を貯めておく装置です。オプションは、太陽光発電以外の再生可能エネルギーや非常用発電機などが挙げられます。
太陽光発電システムにこれらの装置を追加することで、次のようなメリットがあります。
電力供給の安定化
太陽光発電は、天候や時間帯によって発電量が変動するため、需要と供給のバランスが崩れるシーンが発生します。蓄電池やオプションを追加すると、その不足分を補うことができる場合があります。また、停電や災害などの緊急時にも電力を確保できるのも大きなメリットです。
自家消費率の向上
蓄電池や他のオプションを追加することで、太陽光発電で生成した電力を自分で消費する割合を高めることができます。これにより、売電や買電への依存度が低くなり、コスト効率の改善が期待できます。
経済性の向上
蓄電池や他のオプションを追加することは、電気料金や税金などの節約に効果的です。例えば、蓄電池によって、ピーク時に電力を貯めてオフピーク時に電力を使うことで、時間帯別料金の適用を回避できます。また、蓄電池や他のオプションは補助金や助成金の対象になる場合があるため、チェックしてみるとよいでしょう。
一方で、次のようなデメリットが生じる可能性があります。
初期費用や運用コストの増加
蓄電池やオプションを追加することで、そのぶん設置や点検にかかる費用が増えます。また、メンテナンスの範囲も広くなるため、管理の手間もかかるでしょう。
故障や劣化のリスク
蓄電池や他のオプションは、太陽光発電システムよりも故障や劣化が早くなる場合があります。特に蓄電池は、使用回数や温度などによって寿命が短くなるのが特徴です。
蓄電池や他のオプションを追加するかどうかは、メリットとデメリットを比較して判断する必要があります。また、追加する場合は、太陽光発電システムとの互換性や容量、性能などを考慮して選択するとよいでしょう。
トラブルに適切に対処しよう！太陽光発電システムが正常に動作しない場合の対処法や予防策
太陽光発電システムの導入においては、システムの劣化や不具合についても考慮しておかなければなりません。トラブルの原因は、次のように分類できます。
外的要因
自然災害や盗難などによって太陽光発電システムが損傷したり失われたりすることです。台風や地震、落雷などは、パネルが損傷する大きな原因になります。また、盗難によってパネルやケーブルが持ち去られる可能性も否定できません。このような外的要因によるトラブルは、予防が難しい場合が多いので、保険への加入や定期的な点検が重要になります。
内的要因
太陽光発電パネルやインバーターなどの部品が故障したり劣化したりすることです。それにより、パネルの出力やインバーターの変換効率が低下する可能性が考えられます。また、接続部分に不良があると発火や感電の危険性があるため注意が必要です。このような内的要因によるトラブルを防止するためには、できるだけ高品質な部品を選択するようにしましょう。
人的要因
設置業者やメーカーなどの不適切な施工や管理によって、太陽光発電システムが不具合を起こすことです。例えば、施工時にパネルやインバーターに傷がついてしまったり、ケーブルがうまく固定できていなかったりする場合などが挙げられます。このような人的要因によるトラブルを防ぐためには、信頼できる業者を選び、契約内容をしっかりと確認することが重要です。
トラブルが発生した場合は、速やかに設置業者やメーカーなどに連絡して修復を依頼しましょう。修復を遅らせると、発電量の低下や事故の拡大などのリスクが高まります。
また、原因を分析して再発防止策を立てることが重要です。原因の分析についても設置業者やメーカーなどに依頼できます。プロに相談することで、専門的な観点から対策を提案してもらえるでしょう。
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