太陽光発電の「発電効率」は、太陽光発電システムを導入する際の重要な判断材料の一つです。同じ設備でも発電量に差が出るため、パネルごとの発電効率を確認し、最適な製品を選ぶ必要があります。
本記事では、太陽光発電の発電効率の基礎知識、種類別の発電効率の違い、発電効率を向上させるための工夫ついて解説します。住宅用太陽光発電を検討している方や、すでに導入済みで「発電量を増やしたい!」と思っている方は、ぜひ参考にしてください。
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太陽光発電の発電効率とは
太陽光発電の発電効率は「発電効率」「変換発電効率」とも呼ばれ、太陽光パネルが受けた光エネルギーを、電気エネルギーに変換する割合を指しています。ここでは、パネルの単位ごとの変換発電効率や、他の再生可能エネルギーとの比較を紹介します。
モジュール変換効率
モジュール変換効率とは、太陽光パネル1枚全体(モジュール)の変換効率を指しています。モジュールは太陽光パネルの単位の一つで、最小単位のセルを集合させて1枚のパネルにしたものです。モジュール変換効率は以下の式で算出されます。
モジュール変換効率(%)={モジュール公称最大出力(W)×100}÷{(放射照度 1,000W/m2)×モジュール面積(m2)}
以下のデータを使って、モジュール変換効率を計算してみます。
モジュール公称最大出力:400W
モジュール面積:2.0m2
放射照度:1,000W/m2(標準試験条件 STC)
(400×100)÷(1,000×2.0)
=40,000÷2,000
=20,0%
太陽光パネルのモジュール変換効率は20.0%となります。
市販のモジュール変換効率は15%〜20%ですが、技術の進歩により、20%を超える高発電効率の製品も登場しています。ただ、実質の発電効率(実際の発電量)は、気温や天候、パネルの枚数・日射量・屋根の向きや角度などさまざまな条件で変動します。
セル変換効率
セル変換効率とは、太陽光パネル1枚(モジュール)を構成している最小単位「セル」1個の変換効率です。セル変換効率は以下の式で算出されます。
セル変換効率(%)={モジュール公称最大出力(W)×100}÷{(放射照度 1,000W/m2)×セル1枚の面積(m2)×モジュール内のセルの個数}
以下のデータを使ってセル1枚の変換効率を計算してみます。
モジュール公称最大出力:400W
セル1枚の面積:0.0180m2
放射照度:1,000W/m2(標準試験条件 STC)
モジュール内のセルの個数:100枚
(400×100)÷(1,000×0.0180m2×100)
=40,000÷1800
=22.22%
太陽光パネルのセル変換効率は約22%となります。
平均的なセルの変換効率は18%〜22%程度です。セル変換効率は、セル同士を接続した際に生じるロスが生じないため、モジュール変換効率と比較して高くなる傾向があります。モジュールと同様、実際の数値は使用条件に依存して変化します。
再生可能エネルギーの発電効率比較
太陽光発電の発電効率は、他の再生可能エネルギーと比べてどれくらいのレベルにあるのでしょうか。以下に示す一覧表は、再生可能エネルギーの発電効率の比較です。
発電方法 | 発電効率 |
---|---|
太陽光発電 | 20% |
風力発電 | 30~40% |
水力発電 | 80% |
地熱発電 | 20% |
バイオマス発電 | 20% |
一目瞭然ですが、水力発電の発電効率が圧倒的です。80%という数値は他の再生可能エネルギーと比較して突出していますが、これは水の落差を利用するため、エネルギー損失が少ないためです。風力発電も比較的高発電効率ですが、風の安定性に左右される点は考慮が必要です。
太陽光は、地熱・バイオマスと同程度の20%で、再生可能エネルギーの中では中程度の発電効率となっています。水力には及びませんが、セル技術などの進化により、今後、太陽光発電の発電効率はまだまだ向上する可能性が高いと言われています。
エネルギーペイバックの視点
再生可能エネルギーを評価する際には、発電効率だけでなく「エネルギーペイバックタイム(EPT)」も重要な指標となります。EPTとは、設備の製造・輸送・設置・運用・解体といったライフサイクル全体で投入されたエネルギーを、その設備が発電によってどれだけの期間で回収できるかを示すものです。
太陽光発電のEPTの優秀さ
太陽光発電は、このEPTの面で非常に優秀です。従来技術では1.4〜2.6年程度とされていましたが、最新の太陽光発電では0.96〜1.9年まで短縮されています。これは、水力発電や風力発電など、一般的に1年以下といわれる再エネと肩を並べる水準に近づいています。
環境負荷の低さと今後の展望
EPTが短ければ短いほど、設備導入による環境負荷を早期に相殺でき、真に「クリーンなエネルギー」としての価値が高まります。太陽光発電は設置の自由度が高く、住宅から産業用まで幅広く導入できるため、国が推進する脱炭素化においても重要な役割を果たしています。技術の進歩により、今後さらにEPTが短縮される可能性も高く、より環境にやさしいエネルギー源として期待されています。
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太陽光発電の種類別の発電効率
太陽光発電には、単結晶シリコンや多結晶シリコン、アモルファスシリコン、CIGS系、ペロブスカイトといった種類があり、種類ごとに発電効率が異なります。ここでは、太陽光発電の種類別の発電効率を比較しました。
単結晶シリコンの発電効率
単結晶シリコンは、単結晶のシリコン基板を使った太陽光パネルです。多結晶と比べてコストがかかりますが、性能や信頼性の点で優れており、住宅用太陽光発電としては現在主流のタイプとして広く普及しています。
単結晶シリコンの発電効率は、20%前後です。この数値は、次世代技術のペロブスカイトを除くとトップレベルであり、PERC(パッシベーテッドエミッター・リアセル)や、HJT(ヘテロ接合)など最新技術との組み合わせにより、さらなる高発電効率化も実現可能となっています。
単結晶シリコンの強みは、結晶構造の均一性です。発電を行う際の電子の移動がスムーズで、電力ロスが少ないため、比較的高い発電効率を発揮できます。温度変化の影響も多結晶よりは少なく、暑い地域や夏場でも比較的高い発電効率を維持できるのも利点です。
P型シリコンの発電効率
シリコン太陽電池のP型・N型は、モジュールのセルを構成する半導体の種別です。P型シリコンは、「ポジティブ型」とも呼ばれ、ホウ素(B)を結晶シリコンに添加し、電子が不足した「正孔(ホール)」が多数キャリア(過剰な状態)となる半導体です。P型シリコンの発電効率は、19〜22%程度です。PERCやTOPConなど最新技術の導入により発電効率のさらなる向上が期待されます。
P型は太陽光だけでなく半導体や電子機器などの需要の増加にともなって成長し、広く普及してきた技術であり、低コストで大量生産できるのが強みとなっています。温度係数はN型より大きく、温度が高くなると発電効率がやや低下しやすい半導体です。
N型シリコンの発電効率
N型シリコンは、P型とともにシリコン太陽電池の基盤となる半導体材料の一種です。「ネガティブ型」とも呼ばれ、主にリン(P)をシリコンに添加して作られています。P型よりも発電効率が良く、21〜24%程度の発電効率を実現しています。N型シリコンの強みは、P型シリコンと異なり自由電子が多い点が挙げられます。そのため、電荷の移動がスムーズで、電子の移動度が高く、変換効率を向上しやすいのが利点です。
また、P型シリコンは、ホウ素と酸素の結合により、光を浴びると発電効率が低下しますが、N型はこの影響を受けません。長期間安定した発電が可能です。P型に比べて生産コストが高く、パネル価格は高くなりがちですが、将来性は高く、今後シリコン型の主流になる可能性があります。
多結晶シリコンの発電効率
多結晶シリコンは、多くのシリコン結晶が集まって形成された太陽電池用の材料です。単結晶シリコンとは異なり、結晶の粒がランダムに並んでいるため、製造しやすくコストが低く抑えられます。
多結晶シリコンの発電効率は15〜20%です。単結晶より電子の移動がスムーズでないため、発電効率は単結晶より低いのですが、コスト面での優位性があり、大規模な太陽光発電にも向いています。
多結晶シリコンは、少ないエネルギーで製造可能なため、エネルギーペイバックタイム(EPT)が短く、環境負荷が低い点も大きなメリットです。コストパフォーマンスも良く、初期投資を抑えながら安定した発電が可能となっています。
デメリットとして、高温時の発電ロスが大きい点が挙げられます。技術革新により単結晶の価格が低下しているため、相対的に多結晶の需要は減少傾向です。市場での存在感も低下しています。
アモルファスシリコンの発電効率
アモルファスシリコンは、結晶構造を持たない非晶質シリコンを使用した太陽電池の一種です。単結晶・多結晶シリコンのように、規則的な結晶構造を持たず、電子の移動度は低いですが、製造が簡単でコストを抑えやすい強みがあります。
アモルファスシリコンの発電効率は、10〜13%です。単結晶・多結晶と比べると発電効率は低めですが、加工性に優れており、シリコン層の厚みを1µm以下と非常に薄くしたり、軽量・柔軟なパネルを形成したりできます。
製造時のエネルギー消費も少ないため、コスト削減だけでなく、環境負荷を低減できるのも利点です。ただ、発電効率が低いため、住宅用や大規模メガソーラーなどにはあまり適していません。携帯デバイスや建材一体型太陽電池(BIPV)などの用途に適しています。
CIGS系の発電効率
CIGS系は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4つの元素を組み合わせて作った薄膜型の半導体です。光吸収能力に優れ、薄い膜でも発電効率的に光を吸収できるほか、高温でも発電効率が落ちにくい強みがあります。CIGS系の発電効率は14〜15%です。単結晶・多結晶には劣りますが、CIGS系は軽量性や柔軟性が非常に高く、建物の壁面や屋根、携帯型デバイスなど、多様な設置場所に対応します。低照度特性も良好で、曇りの日でも比較的高い発電性能を維持できます。
一方、インジウムやガリウムなどの希少金属を使用するため、材料コストが高くなる傾向があります。CIGS系は、軽量性と柔軟性を活かし、建材一体型太陽電池(BIPV)や携帯型デバイスの用途に利用されています。
ペロブスカイトの発電効率
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ有機無機ハイブリッド材料を利用した次世代型の太陽電池です。柔軟な基板にも形成できるため、軽量かつ曲げや歪みに強く、従来のシリコン太陽電池では難しかった曲面や軽量構造物への応用が可能です。建材やモバイル機器、さらには衣服や携帯型デバイスへの搭載といった、新しい利用シーンも期待されています。
発電効率と技術進展
現在のペロブスカイト太陽電池の変換効率はおよそ20%で、既に単結晶シリコンと並ぶ水準に到達しています。さらに研究開発が進み、シリコン太陽電池と組み合わせた「タンデム型」では30%以上の効率も実現しており、短期間での技術革新が顕著です。材料の改良や製造プロセスの最適化が進めば、さらなる効率向上と低コスト化が期待されます。
課題と今後の展望
一方で、ペロブスカイト太陽電池にはいくつかの課題が残されています。特に湿度や熱に対する安定性が十分ではなく、長期使用における耐久性の確保が重要なテーマとなっています。また、大量生産に向けた製造プロセスの標準化やスケールアップも克服すべき課題です。これらが解決されれば、従来のシリコン太陽電池に取って代わるだけでなく、太陽光発電の新たな市場を切り開く存在となるでしょう。
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太陽光発電の発電効率を高めるための工夫
太陽光発電の発電効率は、さまざまな工夫で向上させられます。パネルの選び方や設置の仕方、影対策、メンテナンスなど、太陽光発電の発電効率を高めるために出来る工夫について紹介します。
変換効率が高い太陽光パネルを採用する
太陽光発電の発電効率を高めるためには、変換効率が高い太陽光パネルを採用するのが鉄則です。太陽光パネルには、シリコン系から次世代型まで幅広い種類があり、それぞれ発電効率が異なります。現在最も普及しているタイプで発電効率が高いのは、シリコン系太陽電池(結晶系)です。シリコン系にも単結晶・多結晶・アモルファスシリコンなどの種類がありますが、最も発電効率が高いのは単結晶シリコンです。
新しい技術であるほど発電効率は高くなりますが、価格も高くなります。単結晶シリコンは高発電効率な技術ですが、価格も高いため、コストパフォーマンスを考慮しながら総合的に判断します。
適切な場所・向き・傾斜角度に設置する
太陽光発電設備は、適切な場所・向き・傾斜角度に設置すると、発電効率を向上できます。屋根の設置する場所、向き、傾斜角度によって発電量が変わるからです。標準となるのは、真南向き・傾斜角30度での設置です。
日本(北半球)では、太陽が南の空を通るため、パネルを南向きにすると、一日を通して多くの太陽光を受けられます。
地域や条件によって、最適な角度は若干異なります。沖縄は推奨傾斜角が15〜20度、札幌は30〜40度など、地域ごとの最適な傾斜角を調べておきましょう。
影がかからないよう注意する
太陽光発電の発電効率を高めるうえで、「影」は天敵です。どんなに高性能な設備を採用しても、太陽光パネルに建物や樹木などの影がかかると、変換効率は下がり発電量も減少します。そのため、設置場所の周囲の建物、電柱、植栽などに注意しなければなりません。
具体的な対策として、影のシミュレーションを行いましょう。周辺の建物、樹木、電柱などの環境調査を行い、これらの影響をシミュレーションし、影がかからない時間帯や季節を特定します。
シミュレーション結果にもとづいて、影を避けるようにパネルを設置します。太陽光発電の適切な設置工事に関しては、実績豊富な信頼できる施工会社に依頼するのがベストです。
定期的に清掃・点検を実施する
太陽光発電は、定期的な清掃と点検を実施すれば、発電効率を高められます。太陽光発電はメンテナンスの手間がかからないほうですが、定期的に清掃・点検を実施し、早期に不具合や汚れを発見しましょう。チェックポイントの一つは、太陽光パネルの表面に付くホコリや汚れです。鳥のフン、葉っぱなどが積もると、パネルが受ける太陽光の量が減少し、発電効率が低下します。
配線の緩みや断線、パネルの損傷チェックなど、定期的な点検も発電効率を保つために重要です。パネルやシステムに問題があった場合、早期に発見して修理や交換を行えば、無駄なエネルギー損失を防げます。
清掃の頻度は、年1回が目安とされています。また、定期点検は設置後1年目、その後は4年に1度が推奨されています。
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太陽光発電の発電効率に関するまとめ
太陽光発電を有効に活用するためには、まず発電効率に関する正しい理解が欠かせません。太陽光パネルには単結晶、多結晶、薄膜といった複数の種類があり、それぞれに変換効率や価格、設置条件の違いがあります。導入を検討する際には、単に価格だけでなく変換効率や耐久性、メーカー保証などを比較し、自宅の条件にもっとも適したパネルを選ぶことが大切です。
運用面での工夫
パネルを設置した後も、発電効率を高めるためには運用の工夫が必要です。例えば、南向きで日射を妨げない場所に設置すること、周囲の建物や樹木による影を避けることは基本的なポイントです。また、パネル表面に汚れやほこりが溜まると発電量が低下するため、定期的な清掃と点検が不可欠です。これらの小さな工夫の積み重ねが、長期的な発電効率の差となって表れます。
専門業者に相談する重要性
太陽光パネルの選定から点検・清掃に至るまでをすべて自己判断で行うのはリスクが伴います。知識不足から最適なパネルを選べなかったり、設置不良や清掃方法の誤りでトラブルを招いたりする恐れがあるからです。そのため、実績豊富で信頼できる施工会社に相談し、専門的な知見を取り入れることが、安心かつ効率的な太陽光発電の運用につながります。