
太陽光発電の発電量低下は珍しくない現象
太陽光発電システムを数年運用していると、「なんとなく発電量が減った気がする」と感じることがあります。これは決して珍しいことではなく、様々な要因で発電効率は徐々に、あるいは急激に低下します。
問題は、その原因を特定し、適切に対処できるかどうかです。放置すれば経済損失が拡大し続け、場合によっては安全上の問題にも発展します。
早期発見・早期対処が損失を最小化
発電量が10%低下した状態が1年続けば、年間数万円の損失になります。これが5年、10年と続けば、累計で数十万円の機会損失です。
早期に原因を発見し、対処すれば、この損失を最小限に抑えられます。本記事では、発電量低下の主な原因と、その対策方法を詳しく解説します。
DIYで確認できるポイントも紹介
専門業者に依頼しなければ分からない問題もありますが、自分で確認・対処できる問題も多くあります。特に、汚れや簡単な点検は、DIYで十分に対応可能です。
本記事では、自分でできるチェック方法と、専門業者に依頼すべき症状の見分け方も紹介します。適切な判断で、コストを抑えながら発電効率を維持しましょう。
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原因①:パネル表面の汚れ(最も多い原因)

汚れは発電量を確実に下げる
太陽光パネル表面の汚れは、発電量低下の最も一般的な原因です。黄砂、花粉、排気ガスのすす、鳥の糞、落ち葉、土埃——これらが積み重なると、太陽光を遮り、発電効率が低下します。
軽度の汚れでも5〜10%程度、ひどい場合には20〜30%も発電量が落ちることがあります。年間発電量5,000kWhのシステムで20%低下すれば、1,000kWhの損失。電気代換算で年間3万円以上の損失になります。
「雨で流れる」は半分ウソ
「雨が降れば汚れは自然に流れる」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。パネルの傾斜が緩い場合、汚れが残りやすくなります。また、鳥の糞のような粘着性のある汚れは、雨だけでは落ちません。
都市部や幹線道路沿いでは、排気ガスに含まれる油分が付着し、それにホコリが固着して頑固な汚れになることもあります。田園地帯では、花粉や土埃が大量に付着します。
自分で確認する方法
双眼鏡を使って地上からパネルを観察するだけでも、汚れの状態はある程度確認できます。特に、以下のサインがあれば汚れが蓄積している可能性が高いです。太陽光パネル表面が白っぽく見える、筋状の汚れが見える、一部分だけ色が違う、鳥の糞の痕跡がある——これらが確認できたら、清掃が必要なサインです。
また、発電量モニターで前年同月と比較して10%以上低下している場合も、汚れを疑うべきです。
自分で清掃する場合の注意点
「自分で清掃すれば費用が浮く」と考える方もいますが、屋根の上での作業は転落の危険があり、非常に危険です。特に2階建て以上の屋根や、傾斜がきつい屋根では、絶対に自分で登らないでください。もし1階の屋根など、安全に作業できる場合でも、以下の点に注意が必要です。
柔らかいスポンジと水だけで洗う(洗剤や研磨剤は使わない)、高圧洗浄機は使わない(パネルを傷める)、晴天の日中は避ける(急激な温度変化でパネルが割れる可能性)、滑り止めの靴を履き、命綱を使用する——これらを守れない場合は、専門業者に依頼すべきです。
専門業者による清掃の費用と効果
専門業者による清掃費用は、一般的な住宅用で1回あたり2〜4万円程度です。年1〜2回の清掃を推奨します。
清掃後、発電量が10〜20%回復するケースも多く、費用対効果は十分にあります。年1回3万円の清掃で、年間3万円以上の発電量回復が見込めれば、十分に採算が合います。
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原因②:影の影響(環境変化による)

新築建物や樹木の成長で影が発生
設置当初は問題なかったのに、後から影の影響を受けるようになるケースがあります。隣地に建物が新築された、近くの樹木が成長して枝が伸びた、自宅の庭木が大きくなった——こうした環境変化により、パネルに影がかかるようになります。
太陽光パネルは、一部でも影がかかると、その影響はかかった部分だけでなく、パネル全体、場合によってはシステム全体の発電量に影響します。わずかな影でも、想像以上に大きな発電量低下を引き起こすのです。
時間帯による影の変化
影の影響は、時間帯や季節によって変わります。冬場の朝や夕方は太陽高度が低いため、夏場には影がかからない場所でも影響を受けることがあります。
「午前中だけ発電量が少ない」「冬場だけ発電量が大幅に減る」——こうした症状があれば、特定の時間帯・季節に影がかかっている可能性があります。
自分で確認する方法
晴天の日に、朝・昼・夕方の3つの時間帯で、屋根の様子を観察してみましょう。双眼鏡を使えば、地上からでも影の状態を確認できます。
また、発電量モニターの時間帯別データを確認することも有効です。特定の時間帯だけ発電量が急激に低下している場合、その時間帯に影がかかっている可能性が高いです。冬至の頃(12月下旬)に確認すると、1年で最も太陽高度が低い時期なので、影の影響を最大限に把握できます。
影の対策方法
影の原因が自宅の庭木の場合は、剪定や伐採で対処できます。専門業者に依頼すれば、数万円で解決することが多いです。隣地の樹木の場合は、所有者に相談して剪定をお願いすることになりますが、法的には相手に剪定義務があるわけではないため、丁寧な交渉が必要です。
新築建物による影の場合は、残念ながら対処が困難です。この場合、発電量低下を受け入れるか、可能であればパネルの配置を変更するなどの抜本的な対策が必要になります。
影の影響を最小化する技術
最近のパワーコンディショナーには、影の影響を最小化する「MPPT制御」や「オプティマイザー」機能が搭載されているものがあります。古いシステムの場合、パワコンを最新型に交換することで、影の影響を軽減できる可能性があります。
また、マイクロインバーター方式のシステムに変更すれば、一部のパネルに影がかかっても、他のパネルへの影響を最小限に抑えられます。
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原因③:パワーコンディショナーの劣化・故障

パワコンの寿命は10〜15年
パワーコンディショナー(パワコン)は、太陽光パネルで発電した直流電力を家庭で使える交流電力に変換する重要な機器です。しかし、電子部品で構成されているため、パネルより寿命が短く、10〜15年程度で交換が必要になります。 設置から10年近く経過している場合、パワコンの劣化が発電量低下の原因となっている可能性があります。
パワコン劣化の症状
パワコンが劣化すると、以下のような症状が現れます。 変換効率の低下(発電量がじわじわ減少)、異音(ブーンという音が大きくなる、異常な音)、本体の過度な発熱、エラー表示の頻発、動作の不安定(時々停止する)——これらの症状が見られたら、パワコンの点検が必要です。
自分で確認する方法
パワコンは通常、屋内または屋外の目に見える場所に設置されています。以下の点を自分で確認できます。 エラーランプが点灯していないか、異音がしていないか、本体が異常に熱くなっていないか、液晶画面にエラーメッセージが出ていないか、これらは専門知識がなくても確認できます。 また、モニターで「変換効率」が表示される場合、その数値が設置当初より大きく低下していないかも確認しましょう。一般的な変換効率は95%前後ですが、これが90%を下回っている場合は要注意です。
パワコン交換の費用
パワコンの交換費用は、容量や機種によりますが、一般的な住宅用(3〜5kW)で20〜40万円程度です。高額な出費ですが、放置すれば発電量低下が続き、さらに大きな損失になります。 メーカー保証期間内(通常10年)であれば、無償で修理または交換してもらえる可能性があります。保証書を確認し、期間内であればすぐにメーカーまたは販売業者に連絡しましょう。
交換時には最新型への更新も検討
パワコンを交換する際は、最新型への更新を検討する価値があります。10年前の機種と比べて、最新機種は変換効率が数%向上しており、発電量の増加が期待できます。 また、モニタリング機能やスマート機能が充実している製品もあり、発電状況の把握がしやすくなります。初期費用は数万円高くなりますが、長期的には十分に回収できる可能性があります。
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原因④:パネル自体の劣化・破損

経年劣化による出力低下
太陽光パネルは20〜30年使えるとされていますが、年月とともに徐々に劣化し、出力が低下します。一般的には、年0.5〜1%程度の出力低下が「正常な経年劣化」とされています。
10年使用すれば5〜10%の出力低下は避けられません。これは正常な範囲内ですが、それ以上の急激な低下がある場合は、何らかの異常が発生している可能性があります。
セルクラック(微細なひび割れ)
太陽光パネルを構成するセル(太陽電池)に微細なひび割れが発生することを「セルクラック」と言います。肉眼では見えないほど小さなひびですが、発電性能に大きな影響を与えます。
セルクラックの主な原因は、施工時の衝撃、強風や台風による振動、積雪の重み、雹(ひょう)の衝撃、熱膨張・収縮の繰り返しなどです。
ホットスポット(局所的な発熱)
太陽光パネルの一部分に不具合があると、その部分が異常に発熱する「ホットスポット」が発生することがあります。これは放置すると火災の原因にもなる危険な状態です。
ホットスポットは、セルクラック、配線不良、影の影響などが原因で発生します。赤外線サーモグラフィーカメラでないと発見できないため、専門業者による定期点検が重要です。
自分で確認する方法(限界あり)
太陽光パネル自体の劣化や破損は、専門的な検査機器がないと正確には判断できません。ただし、以下のような明らかな異常は、地上から双眼鏡で確認できる場合があります。
パネル表面のガラスが割れている、変色している部分がある、パネルが変形している——これらが確認できたら、すぐに専門業者に連絡すべきです。
専門業者による点検が必須
セルクラックやホットスポットは、サーモグラフィー検査やEL(エレクトロルミネッセンス)検査という専門的な検査でないと発見できません。
4年に1回程度の定期点検では、こうした検査を含めて実施することが推奨されます。費用は検査内容により異なりますが、サーモグラフィー検査を含めて5〜10万円程度が目安です。
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原因⑤:配線・接続部の不良

見落とされがちな配線トラブル
太陽光パネルやパワコンに注目が集まりがちですが、配線や接続部の不良も発電量低下の重要な原因です。特に、屋外に配線されている部分は、紫外線や雨風の影響で劣化しやすくなります。
配線の被覆が劣化してひび割れる、接続部が緩む、腐食する——こうした問題が発生すると、電気抵抗が増加し、発電量が低下したり、最悪の場合は火災のリスクにもつながります。
接続不良による発熱
接続部が緩んだり、接触不良を起こしたりすると、その部分で発熱します。この発熱が進行すると、接続部が焼損し、発電が停止する危険性があります。
実際に、太陽光発電システムでの火災事故の原因として、配線や接続部の不良が挙げられるケースが少なくありません。
自分で確認する方法(限界あり)
配線の多くは屋根裏や屋外の高所にあり、一般の方が確認するのは困難です。ただし、パワコン周辺の配線であれば、目視で確認できる場合があります。
配線の被覆にひび割れがないか、焦げた跡がないか、接続部に緩みがないか——これらを確認できる範囲で見てみましょう。ただし、触ったり動かしたりすると危険なので、見るだけにとどめてください。
専門業者による点検が安全
配線や接続部の点検は、専門的な知識と機器が必要です。定期点検では、目視確認だけでなく、サーモグラフィーカメラで異常発熱箇所がないかをチェックします。
異常が見つかった場合は、早急に修理が必要です。修理費用は箇所や範囲によりますが、数万円〜10万円程度が目安です。
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DIYでできる発電量チェックと対処法

毎月の発電量を記録する習慣
最も基本的で重要なのは、毎月の発電量を記録し、過去のデータと比較することです。多くのモニターには、月別・年別の発電量データが記録されています。
前年同月と比較して、天候を考慮しても10%以上低下している場合は、何らかの問題が発生している可能性があります。早期に原因を調査しましょう。
時間帯別データで問題を絞り込む
時間帯別の発電量データを確認すると、問題の絞り込みができます。午前中だけ発電量が少ない→午前の影の影響を疑う、午後だけ発電量が少ない→午後の影の影響を疑う、一日中均等に低下→汚れやパワコン劣化を疑う、突然発電が止まる→パワコンや配線の故障を疑う——このように、症状から原因を推測できます。
エラーコードを記録する
パワコンにエラー表示が出た場合は、エラーコードを記録しておきましょう。取扱説明書やメーカーのウェブサイトで、エラーコードの意味を確認できます。
軽微なエラーは自動復旧することもありますが、頻繁に同じエラーが出る場合は、点検が必要なサインです。
簡単な清掃は自分でも可能(安全な範囲で)
1階の屋根など、安全に作業できる場合に限り、簡単な清掃は自分でも可能です。ただし、以下の条件を守れる場合のみにしてください。
安全に屋根に登れる、滑り止めの靴と命綱を使用できる、柔らかいスポンジと水だけで洗う、高圧洗浄機は使わない、晴天の日中は避ける——これらが守れない場合は、必ず専門業者に依頼してください。
定期点検を自分でスケジュール管理
業者からの案内を待つのではなく、自分でカレンダーに「4年に1回の定期点検」をスケジュール登録しておきましょう。
点検時期が近づいたら、自分から業者に連絡して予約を取ります。能動的に管理することで、点検の漏れを防げます。
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いつ専門業者に相談すべきか?

以下の症状が見られたら、DIYでの対処は危険または不可能です。すぐに専門業者に連絡しましょう。
パワコンがエラーを頻発する、異音や異臭がする、発電が完全に停止した、前月より30%以上発電量が減少した、パネルに明らかな破損が見える、配線に焦げた跡がある——これらは緊急性の高い症状です。
「様子を見る」のは1ヶ月まで
「ちょっと発電量が減った気がする」程度であれば、1ヶ月ほど様子を見てもいいでしょう。天候の影響かもしれません。
しかし、2ヶ月連続で前年同月より明らかに発電量が少ない場合は、点検を依頼すべきです。「もう少し様子を見よう」と先延ばしにしている間にも、経済損失は拡大し続けます。
定期点検は4年に1回が推奨
経済産業省のガイドラインでは、住宅用太陽光発電について4年に1回程度の定期点検を推奨しています。症状がなくても、予防的な点検を受けることが重要です。
定期点検では、目視点検、発電量測定、サーモグラフィー検査、配線チェックなど、総合的な診断を行います。費用は5〜10万円程度ですが、大きなトラブルを未然に防ぐ効果があります。
複数業者から見積もりを取る
点検や修理を依頼する際は、可能であれば複数の業者から見積もりを取りましょう。費用や対応内容に大きな差があることも珍しくありません。
ただし、緊急性が高い場合(発電停止、異臭など)は、迅速な対応を優先し、まずは1社に連絡して現状を見てもらうことが重要です。
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まとめ:発電量低下は「早期発見・早期対処」が鉄則

発電量が10%低下した状態を1年放置すれば、数万円の損失。5年放置すれば数十万円の損失になります。「少しくらい大丈夫」と放置せず、早めに原因を特定し、対処することが重要です。
自分でできること、専門家に任せること
汚れの確認や簡単な清掃、発電量の記録と比較——これらは自分でできます。一方、パワコンの修理、配線の点検、サーモグラフィー検査——これらは専門業者に任せるべきです。
自分でできることは積極的に行い、専門的な判断や作業が必要な場合は躊躇せず業者に依頼する——このバランスが、コストを抑えながら発電効率を維持するコツです。
定期点検が最大の予防策
多くのトラブルは、定期点検で早期に発見できます。4年に1回、専門業者による総合的な点検を受けることで、大きなトラブルを未然に防ぎ、システムの寿命を延ばすことができます。
点検費用を「もったいない」と考えず、「システムを長持ちさせ、発電効率を維持するための投資」と考えましょう。
太陽光発電を長く、効率的に使うために
太陽光発電は、適切なメンテナンスを行えば、20年以上にわたって安定的に発電を続けます。発電量の変化に敏感になり、異常を早期に発見する——この習慣が、長期的な経済メリットを最大化する鍵なのです。
























