
太陽光発電システムの固定価格買取制度(FIT)が終了した、いわゆる「卒FIT」を迎えた家庭にとって、最大の課題は売電単価の大幅な下落です。これまで1kWhあたり24円~48円で売電できていた電力が、卒FIT後は7円~11円程度まで下がることが一般的です。
EV(電気自動車)や蓄電池を導入していれば、余剰電力を貯めて自家消費に回す戦略が有効ですが、これらの高額な設備がない家庭では、「昼間に発電した電力をいかに無駄なく使い切るか」が、経済メリットを維持するための唯一かつ最大の戦略となります。
EV・蓄電池がない家庭が、卒FIT後も電気代を最小限に抑えるための「自家消費最大化の戦略」と、電力料金プランの選択肢を徹底的に解説します。設備投資なしで経済効果を維持するための具体的なアクションプランをご確認ください。
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卒FIT後の経済構造の変化と「自家消費」の重要性

卒FIT後は、電力の「価値」が大きく変わるため、運用に対する考え方を根本から見直す必要があります。
売電単価と買電単価の逆転現象
卒FIT後の最大の変化は、「売電単価」と「買電単価」の間に大きな差が生まれることです。
売電の価値の低下
余剰電力を売ることで得られる収入は、1kWhあたり7円~11円程度です。
自家消費の価値の向上
一方、電力会社から電気を買う際の単価は、プランにもよりますが1kWhあたり25円~35円程度です。
買電回避が最優先
1kWhの電気を売って得られる7円の利益よりも、1kWhの電気を買わないことで回避できる30円の支出の方が、圧倒的に経済メリットが大きい(約4倍の価値がある)という逆転現象が起こります。そのため、売電ではなく、自家消費を徹底する戦略が必須となります。
自家消費を阻む最大の課題:消費と発電のミスマッチ
太陽光発電の最大の弱点は、発電量が最大になる昼間(10時~14時)に、多くの家庭で消費量が最低になることです。
多くの家庭が日中不在
昼間は家電の稼働が冷蔵庫や待機電力に限定され、発電量のほとんどが余剰電力となり、安価な単価で売電されてしまいます。
夜間の買電の増加
発電できない朝晩や夜間に、電力会社から高い単価で電気を買うことになり、トータルの電気代削減効果が小さくなります。
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設備投資なしで自家消費を最大化する行動戦略

EVや蓄電池がなくても、生活習慣や家電の使い方を工夫するだけで、自家消費率を大きく向上させることができます。
行動戦略1:家電を「発電時間帯」に集中稼働させる
最も単純かつ効果的な対策は、電気を多く使うタイミングを発電ピーク時間帯(午前10時~午後3時頃)に意図的にシフトさせることです。
洗濯
洗濯機、特に乾燥機を使用する場合は、必ず午前中に済ませます。
食器洗い乾燥機
タイマー設定機能を利用し、ピーク発電時間帯に稼働するように設定します。
給湯器(エコキュート)の手動制御
通常、夜間に沸き上げ設定になっている給湯器を、昼間の余剰電力を利用して沸き増しできる「昼間沸き上げモード」や「手動沸き上げ」機能に変更・利用します。
掃除
掃除機を使う時間を日中に変更します。
行動戦略2:高消費電力機器を「計画的に利用」する
特に消費電力の大きい冷暖房機器(エアコン)は、運用方法に工夫が必要です。
設定温度の維持
発電している昼間のうちにエアコンを稼働させて室内温度を快適な状態にしておき、発電が停止する夕方以降は、高性能な住宅であれば温度を維持することで、夜間の急激な電力消費を防ぎます。
IHクッキングヒーターの利用
昼食の調理や、翌日の料理の下準備などを日中にIHで済ませることで、発電電力を無駄なく消費します。
行動戦略3:HEMSを活用した「見える化」と「自動制御」
HEMS(ホームエネルギー管理システム)は、設備投資なしの家庭でも非常に有効なツールです。
リアルタイムの把握
HEMSにより、「今、売電が発生しているのか(電気を使い切れていないのか)」がリアルタイムで把握できるため、「余剰」が発生している瞬間に洗濯機を回すなどの臨機応変な対応が可能になります。
スマート家電のタイマー最適化
HEMSと連携可能なスマート家電(エアコン、照明など)は、手動ではなく自動で最適な時間帯に稼働させるよう設定を変更します。
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卒FIT後に最適な電力料金プランの選び方

EV・蓄電池がない家庭の卒FIT戦略の成否は、自家消費の徹底に加え、どの電力会社と、どのようなプランで契約するかにかかっています。
選択肢1:売電単価を優先する「高価買取プラン」
卒FIT後の売電単価が7円~11円であるのに対し、新電力会社の中には、12円~15円程度の高単価で余剰電力を買い取るプランを提供している会社があります。
売電単価優先のメリット
売電収入を最大限に確保できます。
売電単価優先のデメリット
高単価買取プランの多くは、昼間の買電単価が割高に設定されていることが多いです。自家消費を徹底できない(昼間も電気を買いがちな)家庭では、結果的に支払いが増えるリスクがあります。
推奨家庭
昼間の不在時間が長く、自家消費が難しいため、売電収入に頼らざるを得ない家庭。
選択肢2:買電単価を優先する「昼間低価格プラン」
太陽光発電の恩恵を受けていない家庭(夜間に電力会社から電気を買う家庭)を主なターゲットにした、昼間の買電単価を標準的な価格に抑えたプランです。
買電単価優先のメリット
昼間に電気を使い切れずに買電に回る場合でも、高い単価で購入するリスクを回避できます。
買電単価優先のデメリット
売電単価が最低レベルに設定されることがほとんどです。
推奨家庭
日中に在宅しており、自家消費を積極的に行うことで、売電収入を諦めて買電支出の最小化を目指す家庭。
選択肢3:特定の「エコ家電」と連携したプラン
特定の高効率家電(エコキュートなど)を持っていることを条件に、特定の時間帯の買電単価を優遇するプランです。
メリット
昼間の発電と、エコキュートの夜間沸き上げを組み合わせることで、トータルの光熱費を抑えやすくなります。
推奨家庭
エコキュートなど、高効率な省エネ家電を導入している家庭。
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まとめ|卒FITでEV・蓄電池がない家庭の自家消費改善とおすすめ電力プラン
EV・蓄電池がない家庭の卒FIT戦略は、「売電収入の追求を諦め、買電支出の最小化」に全力を尽くすことに尽きます。
設備投資なしで経済メリットを維持するためのアクションプランは以下の通りです。
1. 昼間に洗濯機、食洗機、給湯器(沸き増し)を集中稼働させる。
2. 発電量をHEMSで「見える化」し、余剰発生時に電気を使う習慣をつける。
3. ご家庭の消費パターンに合わせて、昼間の買電単価が低い電力プランを選択する。
これらの行動戦略を徹底することで、卒FIT後も太陽光発電を「単なる売電設備」ではなく、「最大の節約源」として活用し続けることが可能です。最適なプラン選びと具体的な稼働時間の変更については、専門業者や電力会社に相談しながら進めてください。
























