太陽光発電の普及に伴い、悪質な訪問販売や詐欺的な契約トラブルが急増しています。消費生活センターへの相談件数は、2024年に入ってから前年比で30%以上増加しており、特に高齢者世帯をターゲットにした手口が巧妙化しています。
「電力会社から来ました」と名乗る偽装訪問、実在しない補助金を餌にした契約、PPAやリース契約の誤認説明など、手口は多様化しています。本記事では、2024年から2025年にかけて急増している太陽光詐欺の最新手口と、被害に遭わないための具体的な対策をまとめました。既に契約してしまった方への対処法も解説します。
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「電力会社から来ました」偽装訪問販売
電力会社を装う手口の実態
最も多いのが、「電力会社から委託されて訪問しています」「電気設備の点検に来ました」と名乗り、家に上がり込んで太陽光発電の契約を迫る手口です。訪問員は、電力会社のロゴに似たデザインの名刺や腕章を用意し、一見すると本物の電力会社社員に見えるよう装っています。
家に上がると、「電気使用量が多すぎます」「このままでは電気代が上がり続けます」と不安を煽り、「今すぐ太陽光を設置すれば電気代がタダになります」と契約を迫ります。高齢者は電力会社からの正式な訪問だと信じ込み、言われるままに契約書にサインしてしまうケースが多発しています。
実際の被害事例
80代の女性Aさんは、「関西電力の関連会社」と名乗る男性の訪問を受けました。男性は「電気料金が値上がりするので、太陽光発電を設置すれば安くなる」と説明し、その場で契約書にサインさせました。後日、工事業者が来て初めて200万円以上の契約であることが判明。Aさんは電力会社に確認したところ、そのような訪問販売は一切行っていないことが分かりました。
契約書を確認すると、設置費用が相場の2倍以上で、しかも15年ローンが組まれていました。クーリングオフ期間を過ぎていたため、解約には違約金が発生し、結局50万円以上を支払う羽目になりました。
見破るポイントと対策
電力会社が個別訪問で太陽光発電の勧誘をすることは絶対にありません。訪問員が「電力会社から来た」と言っても、決して家に上げず、会社名と担当者名を聞いて、自分で電力会社に確認することが重要です。また、その場での契約は絶対に避け、必ず家族や第三者に相談しましょう。
正規の電力会社は、事前に書面で通知してから訪問します。アポイントなしの突然の訪問は、詐欺の可能性が極めて高いです。また、電力会社の社員証は写真付きで会社名がはっきり記載されています。怪しいと感じたら、身分証の提示を求め、その場で電力会社に電話確認することをおすすめします。
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補助金詐欺の巧妙な手口
「今だけ特別な補助金が出る」という嘘
「国の特別補助金制度が今月で終了します」「あなたの地域だけの限定補助金があります」といった嘘で契約を急がせる手口が増えています。実在しない補助金をでっち上げ、「今契約すれば実質無料で設置できます」と誤解させるのです。
巧妙なケースでは、自治体の広報誌や新聞記事を改ざんしたコピーを見せて、「ほら、ここに補助金のことが書いてあります」と信じ込ませます。高齢者は行政の制度に詳しくないため、業者の説明を鵜呑みにしてしまいがちです。
補助金代行手数料の二重取り
実在する補助金制度を悪用するケースもあります。業者が「補助金申請を代行します」と言って高額な手数料を請求し、実際には自分で申請すれば無料でできる手続きで不当に利益を得るのです。さらに悪質な場合、補助金を受け取った後、その金額を業者が着服してしまうこともあります。
ある事例では、業者が「補助金50万円が出るので、それを差し引いた150万円だけ支払ってください」と説明しました。しかし実際には、補助金は後から本人の口座に振り込まれる仕組みだったため、結局200万円全額を支払うことになってしまいました。業者に問い合わせても、「補助金は既に値引きに反映済み」と主張され、泣き寝入りするしかありませんでした。
補助金制度の正しい確認方法
補助金制度は、自治体の公式ホームページや窓口で必ず確認できます。業者の説明を鵜呑みにせず、自分で自治体に問い合わせることが重要です。また、補助金申請は通常、施工後に自分で行うものであり、業者が代行する場合でも、高額な手数料を取ることは稀です。
さらに、補助金には予算枠があり、先着順で締め切られることが多いです。「今月中に契約しないと補助金がもらえない」という説明は、必ずしも嘘ではありませんが、それを理由に即日契約を迫るのは悪質業者の典型的な手口です。焦らず、複数の業者から見積もりを取り、補助金の有無を自分で確認してから判断しましょう。
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PPA契約の誤認説明トラブル
「実質無料」の誤解を招く説明
PPA契約は初期費用ゼロで太陽光を導入できる仕組みですが、悪質業者はこれを「実質無料」「タダで太陽光が手に入る」と説明し、契約の本質を隠します。実際には、発電した電気を業者から購入する必要があり、売電収入も得られないにもかかわらず、「電気代がゼロになる」「売電収入で儲かる」と虚偽の説明をするのです。
契約後、「思っていた話と違う」と気づいても、契約期間は10年から20年と長く、途中解約には高額な違約金が発生します。ある70代の男性は、「無料で太陽光が設置できて、売電収入も入る」と説明を受けてPPA契約をしましたが、後になって売電収入は業者のものであり、自分は電気を買う側だったことを知りショックを受けました。
所有権と売電収入の説明不足
悪質業者は、設備の所有権が業者にあること、売電収入が得られないこと、契約終了後も設備を譲り受けられるとは限らないことなど、不利な条件を意図的に説明しません。契約書の細かい文字で記載されていても、口頭では「細かいことは気にしなくていいですよ」とごまかします。
特に問題なのが、引っ越しや売却時の対応です。PPA契約は設備と紐付いているため、家を売却する際は買主が契約を引き継ぐ必要があります。しかし、これを説明せず契約させ、売却時になって初めて問題が発覚するケースが増えています。
PPA契約を検討する際の注意点
PPA契約自体は違法ではなく、適切に運用されれば有効な選択肢です。しかし、契約前に以下の点を必ず確認しましょう。設備の所有権は誰にあるのか。発電した電気はどう使われ、売電収入は誰のものか。月々の電気料金はいくらで、電力会社よりも本当に安いのか。契約期間と途中解約の条件、違約金の額。引っ越しや売却時の対応。契約終了後の設備の扱い。
これらを書面で確認し、不明点は納得するまで質問しましょう。また、家族や消費生活センターに相談してから契約することをおすすめします。
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リース名義変更トラブル
本人の知らないところで名義貸し
リース契約を悪用した詐欺も増えています。業者が「リース会社の審査に通りやすくするため」と言って、本人以外の名義で契約させるケースです。たとえば、高齢の親の名義ではローンが組めないため、子供の名義を無断で使用する、といった手口です。
ある事例では、70代の母親が太陽光の契約をした際、業者が「お母様の年齢では審査が通りにくいので、息子さんの名義で契約しましょう」と提案しました。母親は息子に相談せず、業者の言うままに息子の名前と勤務先情報を伝えてしまいました。後日、息子のもとにリース会社から契約確認の電話があり、初めて自分の名義で200万円以上の契約が結ばれていたことが発覚しました。
勝手に名義変更される被害
最初は本人名義で契約したものの、業者が勝手に第三者に名義を変更してしまうケースもあります。これは、リース債権を転売するために行われることが多く、気づいたときには見知らぬリース会社から支払督促が届く、という事態になります。
この手口の恐ろしいところは、名義を変更された本人が債務を負わされ、支払いを拒否すると信用情報に傷がつく可能性があることです。法的には契約者本人に責任が及ぶため、被害回復が非常に困難になります。
名義貸しトラブルを防ぐために
絶対に他人名義で契約しないことが鉄則です。業者が「審査に通りやすくするため」「手続きを簡単にするため」と理由をつけても、決して応じてはいけません。また、契約後は定期的に契約内容を確認し、勝手に名義変更されていないかチェックしましょう。
リース会社からの連絡は必ず本人が対応し、不審な点があればすぐに消費生活センターや弁護士に相談することが重要です。
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被害に遭ってしまった場合の対処法
クーリングオフ制度の活用
訪問販売で契約した場合、契約書を受け取ってから8日以内であれば、クーリングオフが可能です。理由を問わず無条件で契約を解除でき、支払った金額も全額返金されます。クーリングオフは書面で行う必要があり、内容証明郵便で送ることをおすすめします。
業者が「クーリングオフはできない」「違約金が発生する」と言っても、法律で認められた権利なので気にする必要はありません。ただし、8日を過ぎると適用されないため、少しでも不安を感じたら、早めに手続きを行いましょう。
消費生活センターへの相談
クーリングオフ期間を過ぎていても、契約内容に問題がある場合は、消費生活センター（電話番号188）に相談しましょう。専門の相談員が、契約の問題点を指摘し、業者との交渉をサポートしてくれます。場合によっては、契約の取り消しや減額が認められることもあります。
消費生活センターは全国どこからでも局番なしの「188」で相談できます。相談は無料で、秘密も厳守されるため、安心して相談できます。
弁護士や法テラスの利用
高額な契約や複雑なトラブルの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。法テラス（日本司法支援センター）では、経済的に余裕がない方向けに無料法律相談や弁護士費用の立替制度を提供しています。
特に、契約書の内容が詐欺的であったり、業者が連絡を無視している場合は、法的手段を取る必要があります。早めに専門家に相談することで、被害を最小限に抑えることができます。
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太陽光の契約でよくある質問（FAQ）
Q1. 訪問販売で契約してしまいましたが、クーリングオフできますか？
はい、契約書を受け取ってから8日以内であれば、理由を問わずクーリングオフが可能です。書面（内容証明郵便推奨）で通知すれば、無条件で契約を解除できます。業者が拒否しても、法律で認められた権利なので、消費生活センターに相談しながら手続きを進めましょう。
Q2. 「電力会社から来た」と言われましたが、本物か確認する方法は？
電力会社が個別訪問で太陽光発電の勧誘をすることは絶対にありません。訪問員の会社名と名前を聞き、その場で電力会社のお客様センターに電話して確認しましょう。また、正規の電力会社社員は写真付きの身分証を携帯しており、提示を求めれば快く見せてくれます。
Q3. 契約後に嘘の説明だったことが分かりました。どうすればいいですか？
すぐに消費生活センター（188）に相談してください。虚偽説明による契約は、消費者契約法により取り消せる可能性があります。契約書、パンフレット、業者との会話記録など、証拠となる資料を揃えておくと、交渉がスムーズに進みます。
Q4. 高齢の親が高額契約をしてしまいました。家族が代わりに解約できますか？
原則として契約者本人でないと解約手続きはできませんが、認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用して解約できる可能性があります。また、事業者が高齢者の判断力低下につけ込んで契約させた場合は、契約の取り消しが認められることもあります。弁護士や消費生活センターに相談しましょう。
Q5. 補助金が出ると言われましたが、実際にはもらえませんでした。詐欺ですか？
実在しない補助金を名目に契約させた場合は詐欺に該当します。また、実在する補助金でも、受給要件を満たしていないのに「必ずもらえる」と断言した場合は、虚偽説明として問題になります。自治体に補助金の有無を確認し、証拠を揃えて消費生活センターに相談しましょう。
Q6. 悪質業者を見分けるポイントは何ですか？
A. 以下の特徴がある業者は要注意です。アポなしの突然訪問。「今日だけ」「あなただけ」など契約を急がせる。電力会社や自治体の関係者を装う。具体的な会社情報を明かさない。高額な値引きや補助金を強調する。契約書の詳細説明を避ける。複数社との比較を妨げる。これらに当てはまる場合は、契約を避けましょう。
太陽光発電は高額な買い物です。訪問販売での即日契約は絶対に避け、必ず複数の業者から見積もりを取り、家族や第三者に相談してから判断しましょう。「今日決めないと損をする」という言葉は、悪質業者の常套句です。焦らず、冷静に判断することが、詐欺被害を防ぐ最大の防御策です。
契約前のチェックリスト：
業者の会社名、所在地、連絡先を確認しましたか？ ・複数の業者から見積もりを取りましたか？ ・契約内容を家族や第三者に相談しましたか？ ・補助金の有無を自治体に直接確認しましたか？ ・契約書の細かい文字まですべて読みましたか？ ・クーリングオフの説明を受けましたか？ ・即日契約を迫られていませんか？ これらのチェック項目を確認し、一つでも不安があれば、契約は保留にしましょう。
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