
タンデム型太陽電池は、複数の半導体材料を積層して発電する次世代の太陽光発電技術です。従来の太陽光パネルは単一の半導体材料で太陽光を電気に変換していましたが、利用できる光の波長に限界がありました。
タンデム型は異なる波長を効率よく吸収できる材料を組み合わせることで、これまで活用できなかった光エネルギーも発電に利用できます。そのため、現在主流のシリコン太陽電池を大きく上回る変換効率の実現が期待されており、世界中で研究開発が進められています。
高効率化が求められる太陽光発電市場
近年は再生可能エネルギーの導入拡大が進む一方で、住宅や工場の屋根など設置スペースには限りがあります。そのため、同じ面積でより多くの電力を生み出せる高効率パネルへの関心が高まっています。
また、電気料金の上昇やEVの普及に伴い、自家消費を重視する家庭も増えています。こうした背景から、限られた設置面積で発電量を最大化できるタンデム型太陽電池は、次世代の主力技術として大きな期待を集めています。
ペロブスカイト・シリコンタンデムが有力候補
現在、数あるタンデム型太陽電池の中でも実用化に最も近いとされているのがペロブスカイト・シリコンタンデムです。
既存のシリコン太陽電池の上にペロブスカイト層を形成する構造で、高い発電効率と量産性の両立が期待されています。既存の製造設備やサプライチェーンを活用しやすいことも大きなメリットです。そのため、日本をはじめ欧米や中国でも研究開発投資が拡大しており、実用化に向けた競争が激しくなっています。
本記事でわかるタンデム型太陽電池の最新動向
タンデム型太陽電池は将来の太陽光発電市場を大きく変える可能性を秘めています。一方で、耐久性や製造コスト、量産技術など解決すべき課題も残されています。
本記事では、タンデム型太陽電池の基本的な仕組みをはじめ、ペロブスカイト・シリコンタンデムが注目される理由、現在達成されている変換効率、そして普及に向けた課題や今後の見通しについてわかりやすく解説します。
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タンデム型太陽光パネルとは?

異なる光を吸収する複数の層を積み重ねて効率を高める
タンデム型(多接合型)太陽電池とは、バンドギャップ(吸収できる光のエネルギー範囲)が異なる複数の半導体材料を積み重ね(タンデム:縦並び)、太陽光の広いスペクトルを効率よく電力に変換する構造の太陽電池です。太陽光は紫外線から赤外線まで幅広いスペクトルを持ちますが、単一の半導体材料(シリコンなど)は特定のエネルギー帯の光しか効率よく吸収できません。
シリコン単独の変換効率の理論限界(Shockley-Queisserの限界)は約29%ですが、タンデム構造では上層で高エネルギー光を・下層で低エネルギー光を吸収することで、理論上40%以上の変換効率が可能になります。宇宙用太陽電池では化合物半導体を使った3接合タンデムで40%を超える変換効率が実現しています。
ペロブスカイト/シリコンタンデムが住宅用に最も期待される
現在最も注目されているタンデム型太陽電池が「ペロブスカイト/シリコンタンデム」です。ペロブスカイト(Perovskite)は特定の結晶構造を持つ材料群の総称であり、塗布・印刷による低コスト製造が可能でバンドギャップを調整できる特性を持ちます。
シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層することで、シリコンが苦手な短波長光をペロブスカイトが吸収し、長波長光をシリコンが吸収するという相補的な構成になります。
この構成で研究室レベルでは33〜34%の変換効率が達成されており、従来のシリコン単体(26%程度が現在の最高記録)を大きく上回ります。製造コストも既存のシリコン製造ラインへの追加で対応できる可能性があり、経済性と性能のバランスで最有力の次世代技術として研究開発が加速しています。
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タンデム型太陽光パネルの変換効率の現状

研究室レベルで33%超、量産レベルは25〜28%程度
タンデム型太陽電池の変換効率について、研究室での最高記録と実用レベルの差を理解しておくことが重要です。ペロブスカイト/シリコンタンデムの研究室最高記録は2024年時点で33〜34%台に達しており、従来のシリコン単体の理論限界を超え始めています。
ただし研究室の最高記録は最適条件での小面積セルの測定値であり、実際の製品(大面積モジュール・長期使用)での変換効率は20〜28%程度になることが多いです。
量産化された最初期のペロブスカイト/シリコンタンデム製品では25〜28%程度の変換効率が想定されており、現在のN型TOPCon(22〜24%)より明確に高効率です。変換効率が5〜10%高い製品が同じ面積で設置できれば、限られた屋根面積での発電量最大化に大きな価値をもたらします。
GaAsやCIGSなど他のタンデム技術との違い
ペロブスカイト/シリコンタンデム以外にもいくつかのタンデム型技術が存在します。GaAs(ガリウムヒ素)系の3接合タンデムは宇宙用太陽電池として実用化されており、40%を超える変換効率を実現しています。ただし製造コストが非常に高く地上用の一般普及は困難です。
CIGS(銅インジウムガリウムセレン)薄膜タンデムは軽量・フレキシブルという特徴を持ち、曲面への設置や建材一体型(BIPV)への応用が期待されています。ペロブスカイト/ペロブスカイトのタンデム(シリコンを使わない構成)も研究が進んでおり、超低コスト化の可能性を持ちます。
地上用住宅・産業用という観点では、製造コスト・性能・耐久性のバランスでペロブスカイト/シリコンタンデムが最有力候補です。
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タンデム型太陽光パネルの普及の課題

耐久性と長期安定性の確保が最大の課題
ペロブスカイト/シリコンタンデムの実用化における最大の課題が耐久性と長期安定性です。
ペロブスカイト材料は熱・湿気・光への耐性が従来のシリコンより劣る場合があり、25年以上の使用を前提とする太陽光パネルとしての耐久性証明が必要です。水分・酸素の浸入を防ぐ高度な封止技術・熱膨張差によるペロブスカイト層の剥離防止・紫外線による劣化抑制など、封止・パッケージング技術の向上が実用化の鍵です。
IEC(国際電気標準会議)の太陽電池耐久性試験(25年相当の加速試験)をクリアすることが市販製品の条件であり、各社が試験クリアに向けた開発を加速しています。
2025〜2030年頃に量産製品が登場する見通し
ペロブスカイト/シリコンタンデムの量産商品化の見通しについて、主要メーカーの計画と業界の見方を整理します。
カナジアンソーラー・ロンジソーラー・パナソニックなどが2025〜2027年頃の量産化を目標として開発を進めています。日本では東京電力・カネカ・東芝などが産学連携でペロブスカイト技術の開発に取り組んでいます。
初期の量産製品は価格が高めになると予想されますが、生産規模の拡大とともに価格低下が進む見通しです。2030年代には現在のN型TOPConの位置をタンデム型が占めるという予測もあります。
太陽光発電の設置を検討している方は、タンデム型の動向を注視しながら、現在の技術(N型TOPCon)での導入と将来のタンデム型との比較を考慮した判断をおすすめします。
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タンデム型太陽光パネルが注目される背景

シリコン単接合の限界が見えてきたことによる技術転換
シリコン太陽電池は長年にわたり太陽光発電の主流技術として発展してきましたが、単接合シリコンの変換効率には「Shockley–Queisser限界」と呼ばれる理論上の上限が存在し、約29%が到達点とされています。
近年のN型TOPConやHJTなどの高効率技術でも25〜26%前後が実用的な上限に近づきつつあり、これ以上の大幅な効率向上は構造の抜本的な変革なしには難しい状況です。
この“天井感”が明確になったことで、より広い光スペクトルを活用できるタンデム型への期待が急速に高まっています。特にペロブスカイト/シリコンタンデムは既存シリコン技術との親和性が高く、製造ラインの転用が可能な点から、次世代の本命技術として世界中のメーカーが研究開発を加速しています。
再エネ拡大と設置面積制約が高効率化を強く後押し
世界的な脱炭素化政策の加速により、太陽光発電の導入量は今後も大幅に増加すると予測されています。しかし住宅や都市部の建物では設置面積に限りがあり、「同じ屋根面積でどれだけ発電できるか」が経済性を左右する重要な指標になっています。
現行のN型TOPConでも高効率化は進んでいますが、タンデム型はさらに5〜10%以上の効率向上が期待でき、限られたスペースでの発電量最大化に大きな価値をもたらします。
また、産業用・メガソーラーでも土地利用効率の向上は重要であり、同じ敷地でより多くの電力を生み出せるタンデム型はLCOE(均等化発電原価)の低減にも寄与します。こうした政策・経済・設置条件の三要素が重なり、タンデム型の実用化に対する期待が世界的に高まっています。
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まとめ:タンデム型太陽光パネルは太陽光発電の効率革命の鍵
タンデム型太陽電池とは?次世代の高効率発電技術
タンデム型太陽電池は、異なる特性を持つ複数の半導体材料を積み重ねることで、太陽光に含まれる幅広い波長のエネルギーを効率的に活用する次世代の太陽光発電技術です。
従来のシリコン単接合セルでは利用しきれなかった光エネルギーも発電に活用できるため、発電効率を大幅に向上できる可能性があります。現在はペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池を組み合わせた「ペロブスカイト・シリコンタンデム型」が有力視されており、世界中で研究開発が加速しています。
単結晶シリコンの限界を超える高変換効率
現在主流となっているN型TOPCon太陽光パネルの変換効率は22〜24%程度ですが、タンデム型太陽電池はこれを大きく上回る性能が期待されています。
研究機関やメーカーの実験では、すでに33〜34%前後の変換効率が報告されており、単接合シリコン太陽電池の理論限界を突破する成果も確認されています。量産技術が確立されれば、同じ設置面積でもより多くの発電量を確保できるため、住宅用から産業用まで幅広い分野で導入効果の向上が期待されています。
実用化に向けた課題は耐久性と量産技術
タンデム型太陽電池の最大の課題は、長期間にわたり安定した性能を維持できる耐久性の確保です。
特にペロブスカイト材料は高効率を実現できる一方で、水分や熱、紫外線による劣化への対策が求められています。
また、研究室レベルの高効率を量産工程で再現するためには、製造コストの低減や品質の均一化も重要なテーマです。各メーカーや研究機関はこれらの課題解決を進めており、2025〜2030年頃には本格的な量産製品の登場が期待されています。
現在はN型TOPCon、将来はタンデム型に注目
現時点で住宅用太陽光発電を導入する場合は、高効率かつ実績豊富なN型TOPConパネルが有力な選択肢といえます。一方で、今後10年を見据えたエネルギー投資を考えるうえでは、タンデム型太陽電池の技術動向にも注目しておきたいところです。
日本でもペロブスカイト太陽電池の研究開発が国を挙げて進められており、国産技術を活用したタンデム型パネルの実用化への期待が高まっています。次世代の太陽光発電市場を大きく変える技術として、今後も目が離せません。
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タンデム型太陽光パネルとは?Q&A よくある質問
Q1. タンデム型パネルはいつ家庭用に購入できますか?
量産商品として家庭用市場に流通するのは早くても2026〜2028年頃になるとみられています。初期製品は価格が高く、主に高性能を求めるプレミアム市場や産業用途から普及が始まる見通しです。
一般家庭が手の届く価格帯で購入できるようになるには2030年代の量産効果によるコスト低下を待つ必要があります。現時点で太陽光パネルの導入を検討している方は、現在最良の技術(N型TOPCon)を選ぶことが合理的です。
タンデム型が普及するまで待つより、現行技術で早期に導入して長期間発電による経済メリットを享受することの方が多くの場合有利です。
Q2. 既存のシリコンパネルとタンデム型は接続できますか?
既存のシリコンパネルとタンデム型パネルを同一の太陽光発電システムに混在させることは基本的に推奨されません。異なる出力特性・電圧・電流を持つパネルを同じストリング(直列接続)に接続すると、性能の低い方に引きずられて全体の発電量が低下します。将来的にタンデム型を導入する場合は独立したストリング・インバーターを使用するか、既存システムを更新する形での導入が適切です。
新たに設置する場合は最初から同一種類・同一仕様のパネルで統一したシステム設計が発電量最大化の基本です。将来の増設・更新を見越した設計については施工業者と事前に相談することをおすすめします。
Q3. 日本製のペロブスカイト太陽電池は開発されていますか?
はい、ペロブスカイト太陽電池は日本が世界をリードする技術分野のひとつです。ペロブスカイト太陽電池の基礎研究は桐蔭横浜大学の宮坂力教授らが先駆けており、日本の研究者が国際的に重要な貢献をしてきました。企業レベルでも東芝・パナソニック・積水化学・カネカなどが量産化に向けた開発を進めており、フィルム型のフレキシブルペロブスカイトパネルでは積水化学が高い変換効率の実証結果を発表しています。
政府も2023年から「グリーンイノベーション基金」でペロブスカイト太陽電池の実用化を重点支援しており、国産ペロブスカイトパネルの2025〜2030年頃の市場投入を目指した開発が加速しています。
























