EVの車載イーサネットとは?CANとの違い・メリット・普及状況を解説

投稿日: 2026年08月21日

EVの車載イーサネットとは?CANとの違い・メリット・普及状況を解説

自動車の電子制御システムは、長年にわたり「CAN(Controller Area Network)」を中心とした車載通信で構築されてきました。CANは高い信頼性や耐ノイズ性、低コストといった特長を備え、エンジンやブレーキ、メーターなど幅広い制御システムで採用されています。

しかし、自動車の電子化が進むにつれて、車内を流れるデータ量は急激に増加しています。従来の制御用途には十分だったCANも、大容量データを扱う次世代EVでは通信速度の限界が課題となり始めています。

EV・自動運転の普及で通信速度が不足する時代へ

近年はEVや自動運転、ADAS(先進運転支援システム)、SDV(Software Defined Vehicle)の普及により、車両が扱うデータ量は飛躍的に増加しています。高解像度カメラやLiDAR、レーダーからは毎秒数百Mbps〜数Gbpsものデータが生成されるため、CAN通信だけではリアルタイム処理が難しくなっています。

さらに、大容量のOTAアップデートやクラウドとの連携も一般化し、従来の車載ネットワークでは十分な性能を確保できないケースが増えています。

車載イーサネットが次世代の通信基盤として注目

こうした課題を解決する技術として期待されているのが「車載イーサネット(Automotive Ethernet)」です。PCやサーバーで広く利用されているイーサネット技術を、自動車特有の高温・振動・電磁ノイズなどの厳しい環境に対応できるよう最適化した通信規格で、高速かつ大容量のデータ伝送を実現します。

車載イーサネットの導入により、自動運転システムやゾーンアーキテクチャ、クラウドサービスとの連携など、次世代EVに求められる通信基盤を構築できるようになります。

本記事ではCANとの違いや将来性を解説

本記事では、車載イーサネットの基本的な仕組みをはじめ、CAN通信との違いや通信速度の比較、なぜ自動運転やSDVに不可欠なのかをわかりやすく解説します。

また、TSN(Time-Sensitive Networking)などの最新技術や、現在の採用状況、今後の普及予測、CANとの共存シナリオについても紹介します。車載通信がどのように進化し、EVの性能や機能を支えていくのか、その全体像を理解したい方はぜひ参考にしてください。

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EVの「CAN」とは何?なぜ限界?

EVの「CAN」とは何?なぜ限界?

40年以上使われてきたCAN通信の仕組み

CAN(Controller Area Network)は1980年代にBoschが開発した車載ネットワーク規格であり、現在もほぼすべての自動車に搭載されています。CANはシンプルな二線式のバス型ネットワークで、複数のECUが同一バスに接続されてデータを共有します。

最大通信速度は標準CANで最大1Mbps(Megabit per second)、高速版のCAN FDで最大8Mbpsです。リアルタイム性・信頼性・コスト効率・ノイズ耐性という点で優れており、エンジン制御・ブレーキ・計器類など車両の多くの制御系に現在も使用されています。

しかし自動運転・ADAS・コネクテッドカーの普及に伴い、カメラ映像(HD・4K)・LiDARの3次元点群データ・OTAアップデートの大容量ファイル転送という用途が急増しており、最大8MbpsのCAN FDでは通信速度が大幅に不足するようになりました。たとえばHDカメラ1台の映像データは毎秒数百Mbps〜数Gbpsに達し、これをCAN FDで伝送するのは物理的に不可能です。

CANと車載イーサネットの通信速度比較

車載イーサネット(Automotive Ethernet)は100BASE-T1(100Mbps)・1000BASE-T1(1Gbps)・2.5GBase-T1(2.5Gbps)・10GBase-T1(10Gbps)という段階的な速度規格が標準化されており、CANと比べて数百倍〜1万倍以上の通信速度を実現します。

100BASE-T1は現在最も普及している車載イーサネット規格で、カメラ映像や制御データの伝送に使われています。1000BASE-T1(1Gbps)はLiDAR・レーダーの高密度データや自動運転システムの大量センサーデータ伝送に採用が増えています。

10GBase-T1は将来の高解像度センサー・大規模自動運転AIデータの伝送を想定した規格です。通信速度の大幅向上に加え、IPプロトコル(TCP/IP)ベースの通信により、クラウドサービス・スマートフォン・外部システムとの連携が容易になるという利点もあります。

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車載イーサネットの技術的特徴

車載イーサネットの技術的特徴

単線化と自動車環境への適応

一般的なオフィス・家庭用のイーサネットは4対8芯のケーブル(Cat5e・Cat6など)を使用しますが、車載イーサネットは1対2芯の単線(シングルペア)ケーブルを使用するように最適化されています(IEEE 802.3bw・802.3bp規格)。この単線化により車内配線の重量削減・コスト削減・スペース効率向上が実現します。

また自動車環境特有の要件である広い温度範囲(−40℃〜+125℃)・振動・電磁ノイズ(EMI)・水・ほこりへの耐性も確保した設計が施されています。電磁両立性(EMC:電磁波の放射・受信耐性)も車載用イーサネットPHY(物理層チップ)において重要な設計要件であり、IEEE・OPEN Alliance(自動車向けイーサネット標準化団体)が規格化を進めています。

AVB・TSNによるリアルタイム通信の保証

自動運転・制御系の通信では「決まった時間内に確実にデータを届ける」というリアルタイム性の保証が不可欠です。一般のイーサネットはベストエフォート型(できる限り速く送るが遅延・パケットロスを保証しない)通信ですが、車載用途では通信遅延のばらつきを最小化する「時刻同期」と「帯域予約」の仕組みが必要です。

AVB(Audio Video Bridging)はイーサネット上で音声・映像のリアルタイム伝送を保証する規格であり、カーオーディオ・カメラ映像の伝送に活用されます。

TSN(Time-Sensitive Networking:時間感応型ネットワーク)はAVBを発展させた規格群であり、マイクロ秒単位の時刻同期・優先度別の帯域予約・フレームのプリエンプション(重要データの割り込み)などの機能で安全制御のリアルタイム通信を保証します。TSNの採用により、車載イーサネット上で安全系・エンタメ系・診断系といった異なる優先度のデータを混在させながら安全系の遅延を保証することが可能になります。

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自動運転・SDVへの活用

自動運転・SDVへの活用

センサーデータの高速集約でAI処理を可能にする

自動運転システムでは複数のカメラ・LiDAR・レーダーから毎秒数GB〜数十GBのセンサーデータが生成され、これを中央の自動運転コンピュータ(エッジAIチップ)に集約してリアルタイムに処理する必要があります。CANの通信速度ではこのデータ量をリアルタイム転送することは不可能であり、車載イーサネット(特に1Gbps・10Gbps規格)が自動運転の実現に不可欠なインフラとなっています。

テスラ・ウェイモ・ヒョンデ(アイオニック5・6)などの先進的な自動運転対応車両では、すでに車載イーサネットが自動運転センサーデータのバックボーン通信として採用されています。OTAアップデートでも車載イーサネットの高速通信が威力を発揮し、数GBに達する大規模ソフトウェアアップデートを短時間で車内に配布できます。

ゾーンアーキテクチャのバックボーンとして機能する

SDVが推進するゾーンアーキテクチャ(車両の物理的な位置でゾーンを分け、各ゾーンのECUを集約するアーキテクチャ)において、車載イーサネットはゾーンコントローラー間・ゾーンコントローラーと中央コンピュータ間の高速バックボーン通信として機能します。

従来の分散ECUでは各ECUがCANバスで接続されていましたが、ゾーンアーキテクチャでは各ゾーンの末端デバイス(センサー・アクチュエーター)はローカルバス(CAN・LIN等)で接続しつつ、ゾーン間・ゾーンと中央間の通信は車載イーサネットが担うという階層的な通信構成が標準になりつつあります。

この構成により配線量を大幅に削減しながらも必要なデータ帯域を確保できるという、コスト・重量・性能の最適なバランスが実現します。

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EV車載イーサネットの普及の現状と今後

EV車載イーサネットの普及の現状と今後

採用車種と市場の成長

車載イーサネットは現在、高級車・スポーツカー・電動SUVを中心に採用が急速に拡大しています。テスラは早期から車載イーサネットを採用しており、モデルS・3・X・Yのすべてに搭載されています。

BMW・メルセデス・アウディなどの欧州プレミアムブランドも新型車への採用を進めており、ADAS・自動運転機能が充実するほど車載イーサネットの搭載が必須となっています。市場調査機関によると、車載イーサネットの世界市場は年率20〜30%という高い成長率で拡大しており、2030年代にはほぼすべての新型車に搭載されることが予測されています。

半導体メーカー(NXP・Renesas・Marvell・Broadcom)が車載イーサネットPHYチップの開発・供給を拡大しており、チップの普及に伴うコスト低下が大衆車への展開を加速させています。

CANとの共存とマイグレーションの課題

車載イーサネットが普及するとはいえ、CANがすぐになくなるわけではありません。CANは枯れた技術として信頼性・コスト・エコシステムの面で優れており、低速・小容量のデータを扱うセンサー・アクチュエーターの制御には引き続き適しています。

現実的な移行シナリオでは、カメラ・LiDAR・OTA・大容量制御通信に車載イーサネットを使用しつつ、低速センサー・小型ECUはCAN・LIN(低速シリアル通信)を継続使用するハイブリッド構成が長期にわたって共存します。

この異種ネットワークを統合管理するゲートウェイECU(CANとイーサネットを橋渡しする変換ノード)の設計・管理も重要な課題です。自動車メーカーとサプライヤーが長年かけて蓄積してきたCAN向けの設計資産・ノウハウをどう車載イーサネット時代に移行させるかが、業界全体の技術移行における重要な問題です。


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まとめ:車載イーサネットは自動運転・SDVのデータ高速道路

車載イーサネットは次世代EVを支える高速通信基盤

車載イーサネットは、従来のCAN通信と比べて数百〜1万倍以上の通信速度を実現する次世代の車載ネットワーク技術です。カメラやLiDARが生成する大容量データの伝送、OTAアップデート、ゾーンアーキテクチャにおける高速通信など、これまでCANでは対応が難しかった用途を支えます。

EVや自動運転車ではソフトウェアとセンサーが果たす役割が急速に拡大しており、その膨大なデータを効率よく処理するために、車載イーサネットは欠かせないインフラとなっています。

高速通信だけでなく安全性や効率性も向上

車載イーサネットの特徴は、通信速度の向上だけではありません。TSN(Time-Sensitive Networking)によって制御系データのリアルタイム性を確保できるほか、単線(シングルペア)ケーブルの採用により配線の軽量化やコスト削減にも貢献します。

また、IPプロトコルを利用することでクラウドサービスやOTAアップデートとの親和性が高く、将来のコネクテッドカーやSDV(Software Defined Vehicle)に適した通信基盤を構築できる点も大きなメリットです。

EV・自動運転車を中心に採用が拡大

現在、車載イーサネットは高性能EVや自動運転対応車を中心に急速に普及しています。特にテスラをはじめとする先進メーカーでは早くから採用が進み、欧州メーカーや新興EVメーカーでも標準的な技術になりつつあります。

ADASや高度な運転支援機能の進化に伴い、車内で扱うデータ量は今後さらに増加する見込みです。そのため、2030年代には車載イーサネットがほぼすべての新型車に搭載されると予測されており、今後の車載通信の中心技術になると期待されています。

CANと共存しながら次世代アーキテクチャへ移行

車載イーサネットが普及しても、CAN通信がすぐに置き換わるわけではありません。エンジン制御や各種センサーなど、通信量が少なく高い信頼性が求められる領域では、CANは引き続き重要な役割を担います。

一方で、大容量データを扱うバックボーン通信には車載イーサネットを採用するハイブリッド構成が主流になると考えられています。両者を適材適所で使い分けながら、ゾーンアーキテクチャやSDVへと移行していくことが、自動車業界の現実的な進化のシナリオとなっています。

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EVの車載イーサネットとは?Q&A よくある質問

Q1. 車載イーサネットは家庭用イーサネットと互換性がありますか?

通信プロトコル(TCP/IP・UDP等)のレベルでは互換性があり、車載イーサネット上で動くアプリケーションは基本的に通常のIPネットワーク通信の仕組みを利用しています。ただし物理層(ケーブル・コネクター・電気的特性)は車載用に最適化されており、家庭用のRJ45コネクターとは異なる専用のコネクターが使われます。

また車載用PHYチップは家庭用チップとは異なる耐環境性能が要求されるため、直接の互換性はありません。

Q2. OTAアップデートに車載イーサネットがないと遅くなりますか?

車載イーサネットなしの環境でも無線(LTE/5G)でOTAデータを受信して更新自体は可能ですが、受信したデータを車内の各ECUに配布する際にCANのような低速ネットワークしかない場合はデータ転送に時間がかかります。数GBの大規模更新を多数のECUに配布する場合、車載イーサネットがあれば数分で完了する転送が、CANでは数時間以上かかることがあります。自動運転・SDV車両が頻繁に大規模OTA更新を行う将来では、車載イーサネットによる高速車内配布が実用上必須になります。

Q3. 車載イーサネットのサイバーセキュリティリスクはありますか?

車載イーサネットはIPプロトコルベースのため、通常のネットワーク通信と同様のサイバー攻撃(不正パケット注入・DoS攻撃・盗聴)に対してリスクがあります。これはCANにも脆弱性があったものの、高速・高機能化により攻撃面が拡大するという意味でより重要な課題です。

車載サイバーセキュリティ規格(ISO/SAE 21434・UNECE WP.29)への適合が義務付けられており、通信の暗号化・認証・侵入検知システム(IDS)の搭載が車載イーサネット対応システムの標準要件になっています。

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執筆・監修者:エコ発電本舗 太陽光・蓄電池・V2H専門チーム

 執筆・監修者:エコ発電本舗 太陽光・蓄電池・V2H専門チーム 
本記事は、太陽光発電・蓄電池・V2Hの施工・販売に携わる専門チームが執筆・監修しています。各メーカーの施工ID保有者やMBA、宅地建物取引士などの有資格者が、豊富な施工実績と最新の業界情報をもとに、信頼性の高い情報をわかりやすく解説いたします。

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